デザインの言語化中毒に陥ること間違いなし『デザインの教室』

デザインの教室 手を動かして学ぶデザイントレーニング

デザインの教室 手を動かして学ぶデザイントレーニング

著者: 佐藤 好彦

概要

本書は、図形や文字、色を使った基本的な構成から、実際のレイアウトに応用するステップまでを、自分の手を動かしながら学べる実践的なワークブックです。さらに、デザインの考え方や構成の意味についても非常に丁寧に解説されているので、ワークに取り組まなくても読むだけで「デザインを言語化する力」が養われていくのも大きな魅力です。個人的には、この読み物としての価値がかなり高いと思っています。

本書のココがすごい

デザインの言語化が凄すぎる

グラフィックデザインの論理は内的必然性。この言葉を主題として、「揃える」「繰り返す」「余白」「分割」「線」「面」「書体」「配色」「レイアウト」という基本項目についてなぜそうしたのかを余すことなく言語化してくれます。 例えば、線の役目については ・分ける:内容のまとまりで領域を分ける ・揃える:揃えたことを強調する ・強調する:文字などを強調する ・結びつける:つながりや関連を示す と細かく分けてそれぞれに対してそのデザインを作りながら解説していく。 このように、本書では、グラフィックデザインの思考様式を掘り下げているところが魅力的です。

基本の徹底

本書では、最低限の要素だけを用いたトレーニングを数多く取り上げています。「円」「線」「面」といった基礎的な形状を中心に構成されており、複雑な形状や高度な表現技法については扱っていません。だからこそ、デザインの見た目に気を取られることなく、「なぜそうするのか」を考えることに集中することができます。

コラムが沁みる

たとえば「客観性」については、次のようなコラムが掲載されています。 『…ある程度「作る自分」と「見る自分」がうまくバランスを取れている状態が理想なのだと思います。できれば、「見る自分」のほうが少しだけ強く、またクライアントの「見る目」より少しだけ厳しければ、仕事もスムーズに進み、モチベーションを失うことなく、「作る自分」をうまく導けるのではないでしょうか』 もちろん、これを読むだけで問題がすべて解決するわけではありません。しかし、自分の中にもう一つの視点が加わることで、思考が深まり、モチベーションの向上にもつながります。 本書に収められているコラムは、このように「いま自分がしていることが、どのように役立つのか」という実感を与えてくれる言葉に満ちています。作業に没頭しがちな中で、ふと立ち止まって気づきを与えてくれる、そんな内省的な文章が、随所に丁寧に散りばめられています。

最後に

読み進めるうちに、自分ではわかったつもりでいた基礎が、いかに曖昧だったかに気づかされます。本書は、デザインの見た目ではなく、その背景にある「なぜそうするのか」という思考を徹底して掘り下げてくれる一冊。手を動かして学ぶうちに、自分の中に新しい視点が芽生えていく感覚があります。

学び直したい方にも、これから始める方にも、心からおすすめできます。ぜひ読んでみてください。

デザインの教室 手を動かして学ぶデザイントレーニング

デザインの教室 手を動かして学ぶデザイントレーニング

著者: 佐藤 好彦