スライドデザインの基本はこの一冊で網羅『とにかく「わかりやすい」スライドデザインの基本とアイデア』
概要
本書は、なぜスライドが「わかりにくく」なってしまうのかを、構成・図解・デザイン(表層)の3層に分けて体系的に解説する一冊です。 著者は、IR資料や企業サイトなどを多数手がけてきたコーポレートデザイン専門のデザイン会社。実際の業務を通じて得たノウハウをもとに、誰もが抱える「伝わらないスライド」の悩みに具体的に応えています。 デザインを専門にしない人でも、業務資料やプレゼンで「伝わる」表現ができるようになるための視点や工夫が、豊富な実例とともに紹介されており、日常的にスライドをデザインするすべての人にとって実践的なヒントが詰まっています。
本書のココがすごい
圧倒的な「網羅性」
本書の最大の特徴は、「わかりやすいスライドとは何か?」という問いに対して、構成・図解・表層という3つの観点から体系的にアプローチしている点にあります。この3層構造を理解することで、デザインの良し悪しを感覚ではなく理論で判断できるようになります。 たとえば、思ったように伝わらないスライドがあったとしても、「それは論理構成の問題か、図解の方法か、視覚的な整理が不足しているのか」といったように、原因を特定しやすくなります。
「ただの見本帳」ではない
よくあるスライドデザイン書では、「こんな図があります」「この型を真似しましょう」といったビジュアルのカタログ的な紹介にとどまってしまうことが多い中、本書は一線を画します。本書が優れているのは、なぜその図解を使うのか、どんな意図でその表現を選ぶのかという「理由」にまで丁寧に踏み込んで解説しているところです。 たとえば、同じ文章から図を作る場合でも、伝えたい目的や強調したい要素によって複数の表現方法が存在し得ることを示し、読者に「決めつけ」ではなく「選択肢」を与えてくれます。 思考の柔軟さと応用力を養う上でも、本書の姿勢は非常に学びが多いと感じます。
本質に迫る「コラムの力」
個人的に、デザイン書籍において「コラム」の質が高い本に出会うと、非常に得した気分になります。本書もまさにその一冊で、思考の本質を丁寧に言語化した良質なコラムが収められています。 たとえば、「なぜアイコンを使いすぎてしまうのか?」という一見些細な疑問に対し、「そもそも本当にアイコンは必要なのか?」という根本的な点から出発し、具体的な代替案まで提示しています。このように、単なるHowToにとどまらず、「どう考えるべきか」までを導いてくれる点において、本書は一段深いレベルで読者に寄り添っていると言えるでしょう。
最後に
数あるスライドデザイン書の中でも、本書は「なぜそうするのか?」という思考の筋道にこだわった解説が光ります。「見た目を整えるだけで終わらない、伝わる資料をつくりたい」そう願うすべての人にとって、本書は頼れる一冊になるはずです。